「10年」と区切るのは、かつて三峡ダムの建設に反対した著名な水利学者、清華大学の故・黄万里教授の言葉に由来している。
戦前、アメリカのイリノイ大学で博士号を取得した黄教授は、建国間もない中国で黄河ダム建設の計画が進められたときに強く反対し、毛沢東から「右派」の烙印を押されて22年間の強制労働に追われた。
1980年代に名誉回復した後、長江の三峡ダム建設が国家の議題にのぼると、中国政府に6度も上申書を提出して反対したが、鄧小平と李鵬首相(当時)に無視された。黄教授が反対した理由は、21世紀の今日、私たちが直面している危機的状況を言い当てたからに外ならない。
そして「もしダムを強硬に建設したら、10年もたないだろう」と警告した。2001年8月、黄教授は病床で家族に向かって三峡ダムを見守りつづけるようにと告げ、「どうにも立ち行かなくなったら、破壊するより方法はない」と遺言を残した。享年90。中国の「水利事業の良心」と称えられる伝説的な人物である。
この記事を見た人にはその様な観点から見ると、なぜ中国の動きに神経質になるのか判ると思います。
自国の安全性が脅かされる事は無いと言えれば好いんだが、少しでも危険を感じるのであれば世界に助けを求めても良いし、地球規模の危険を排除しない訳には行かない。
2017年07月07日
当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
中国「三峡ダム」が直面している巨大な危機、最悪の場合には上海の都市機能が麻痺する
山崩れや地震の原因がダムにあるかもしれない!?(写真は建設中の三峡ダム 2003年撮影)(写真 : wonderland / PIXTA)
三峡ダムの放水(2010年) REUTERS
四川省で起きた大規模な山崩れは、本当に大雨だけが原因なのか。世界最大の三峡ダムが一帯で大地震を頻発させているという指摘があり、さらには砂礫により、ダムそのものも機能不全に陥っている。
6月24日、中国・四川省で大規模な山崩れが発生した。中国メディアによれば、住宅62戸が土砂に埋まり、120人以上が生き埋めになったという。山崩れの現場は、四川大地震と同じ場所であり、ここ数日、大雨が降りつづいて地盤が緩んでいたことが原因だとされる。だが原因はそれほど単純なものではないだろう。
2008年5月に発生した四川大地震はマグニチュード7.9を記録し、甚大な被害をもたらした。震源地近くでは地表に7メートルの段差が現れ、破壊力は阪神・淡路大震災の約30倍であった。
専門家は、四川盆地の北西の端にかかる約300キロにわたる龍門山断層帯の一部がずれたために起きたと分析し、これによって地質変動が起こり、龍門山断層帯は新たな活動期に入ったと指摘している。今後、さらに大規模な地震が発生する可能性が高いのである。
四川盆地はもともと標高5000メートル級の山々がつらなるチベット高原から急勾配で下った場所に位置する標高500メートル程度の盆地で、ユーラシア・プレートと揚子江プレートの境界線の上にあり、大小さまざまな断層帯が複雑に入り組む地震の多発地帯である。
それに加えて、最近の中国の研究では、地震発生の原因のひとつは「三峡ダム」の巨大な水圧ではないかとの指摘がある。ダムの貯水池にためた水の重圧と、地面から地下に沁みこんだ水が断層に達することで、断層がずれやすくなったという分析である。
建設中から数々の難題、天気や地震にまで悪影響
三峡ダムは、中国政府が「百年の大計」として鳴り物入りで建設した世界最大のダムである。16年の歳月を費やして、四川省重慶市から湖北省宜昌市にいたる長江の中流域の中でも、とくに水流が激しい「三峡」と呼ばれる場所に建設された。竣工は2009年だ。
ダムは70万キロワットの発電機32台を擁し、総発電量2250万キロワットを誇り、当初の計画では、湖北、河南、湖南、上海、広東など主要な大都市に電力が供給され、全中国の年間消費エネルギーの1割を供給でき、慢性的な電力不足の解消に役立つはずだった。
だが、建設中から数々の難題が生じた。まず「汚職の温床」と化した。総工費2000億元のうち34億元が汚職や賄賂に消えた。国民の多大な犠牲も強いた。はじめに地域住民約110万人が立ち退きを迫られ、強制的に荒地へ移住させられて貧困化し、10万人が流民になった。
李白、杜甫、白楽天などの詩に歌われた1000カ所以上もの文化財と美しい景観が水没し、魚類の生態系が破壊され、希少動物の河イルカ(ヨウコウイルカ)が絶滅したことは、中国内外で議論の的になった。
そればかりではない。四川大地震が発生した同じ2008年、竣工を目前に控えた三峡ダムで試験的に貯水が開始されると、下流域でがけ崩れと地滑りが頻発した。この年の9月までに発生したがけ崩れと地滑りは、合計32カ所、総距離33キロに達し、崩れた土砂の量は約2億立方メートルにのぼった。
その後の調査で、地盤の変形などが合計5286カ所見つかり、大きなひずみが生じていることが判明した。ダムの構造物や防水壁には約1万カ所の亀裂が見つかり、補修に奔走した。
そして2009年、三峡ダムが完成すると、今度は気候不順が起きた。貯水池にためた膨大な量の水が蒸発して大気中にとどまり、濃霧、長雨、豪雨などが発生するようになったのだ。
気候不順は年々激しくなり、2013年までに、南雪災害、西南干ばつなどの災害が相次いだ。2016年にも豪雨による洪水が発生。エルニーニョ現象が原因だとされたが、死者、行方不明者は128人にのぼり、中下流域で130万人が避難を余儀なくされた。
大地震が次々に起きた。2008年の四川大地震以外にも、汶川大地震、青海省大地震など、毎年のように大小の地震が発生した。2014年には、三峡ダムから約30キロ上流にある湖北省でマグニチュード4.7の地震が連続して2度起きている。
総じてみれば、人工物である三峡ダムが天気や地震にまで影響を及ぼすとは、まるで信じられないような話ではある。
水が流れず、貯水できず、解決策も見いだせない
だが、三峡ダムにとって、さらに深刻な事態がもちあがっている。長江上流から流れて来る砂礫で、ダムがほぼ機能不全に陥り、危機的状況にあることだ。
怒涛のように押し寄せる大量の砂礫で貯水池が埋まり、アオコが発生してヘドロ状態になっている。ヘドロは雑草や発泡スチロールなどのゴミと一体になり、ダムの水門を詰まらせた。ゴミの堆積物は5万平方メートル、高さ60センチに達し、水面にたまったゴミの上を歩ける場所があるほどだという。地元では環境団体などが毎日3000トンのゴミを掻き出しているが、お手上げ状態だとされる。
重慶市でも、押し寄せる砂礫で長江の水深が浅くなった。水底から取り除いた砂礫は50メートルも積みあがった。重慶大橋付近の川幅はもともと420メートルあったが、橋脚が砂礫に埋もれて砂州となり、今では川幅が約半分の240メートルに狭まっている。大型船舶の航行にも著しい支障をきたしている。
水が流れず、貯水できないダムなど何の役にも立たないが、三峡ダムが周囲に及ぼす悪影響は、この先、増えることはあっても減ることはないだろう。中国政府も技術者も根本的な解決策を見いだせず、すでに匙を投げてしまっているからだ。だれも責任を取ろうとする者がいないまま、今も三峡ダムは放置されている。
著名な水利学者の遺言「ダムは10年もたない」
もし三峡ダムが地震の原因のひとつであるなら、今後さらに四川大地震のような大規模な地震が起きる可能性があるだろう。そして大地震が発生したとき、原因を作った「瀕死」の三峡ダムは、果たして持ち堪えられるだろうか?
三峡ダムが建設された当初、中国政府は「千年はもつ」と豪語したが、数々の難題が発覚して、わずか数年で「百年もつ」とトーンダウンした。今日、巷では「10年もつのか」と危ぶむ声がある。
「10年」と区切るのは、かつて三峡ダムの建設に反対した著名な水利学者、清華大学の故・黄万里教授の言葉に由来している。
戦前、アメリカのイリノイ大学で博士号を取得した黄教授は、建国間もない中国で黄河ダム建設の計画が進められたときに強く反対し、毛沢東から「右派」の烙印を押されて22年間の強制労働に追われた。
1980年代に名誉回復した後、長江の三峡ダム建設が国家の議題にのぼると、中国政府に6度も上申書を提出して反対したが、鄧小平と李鵬首相(当時)に無視された。黄教授が反対した理由は、21世紀の今日、私たちが直面している危機的状況を言い当てたからにほかならない。
そして「もしダムを強硬に建設したら、10年もたないだろう」と警告した。2001年8月、黄教授は病床で家族に向かって三峡ダムを見守りつづけるようにと告げ、「どうにも立ち行かなくなったら、破壊するより方法はない」と遺言を残した。享年90。中国の「水利事業の良心」と称えられる伝説的な人物である。
もし「10年もたない」とすれば、期限は2019年だ。あと2年で三峡ダムは決壊するかもしれないのだ。タイムリミットは刻一刻と近づきつつある。唯一の解決策は、黄教授の遺言通り、人間の手で破壊することだけなのだろうか。
譚璐美(タン・ロミ) 作家。東京生まれ、慶應義塾大学卒業、ニューヨーク在住。日中近代史を主なテーマに、国際政治、経済、文化など幅広く執筆。著書に『中国共産党を作った13人』、『日中百年の群像 革命いまだ成らず』(ともに新潮社)、『中国共産党 葬られた歴史』(文春新書)、『江青に妬まれた女――ファーストレディ王光美の人生』(NHK出版)、『ザッツ・ア・グッド・クエッション!――日米中、笑う経済最前線』(日本経済新聞社)、その他多数。新著は『帝都東京を中国革命で歩く』(白水社)。
同じロジックで各国の水力発電ダムにも知恵を使うと同時に一層の検査チェックにも他山の石として?考えて欲しい。
唯一、核兵器を待たない日本は平和利用で許される原子炉で世界トップの技術を取得したのに原子力研究からも遠ざかる国民感情が「父つぁん」としては不満です。
資源の無い我が国には自前の燃料である原子力を発展する必要が有ります。世界一、滅茶苦茶厳しい規制をクリアーしても原子力委員会は未だ稼働の許可を出さない?
(Jul)07. 30. 2019 Society
中国プライドの三峡ダム崩壊? 政府は噂否定も、住民不安
jejim / Shutterstock.com
中国長江中流域にある三峡ダムは、治水や発電を目的とし、当時の李鵬首相が強力に推し進めた大国家プロジェクトだ。建設に17年を要し、2000億元(約3.1兆円)を費やした。その国家のプライドともいうべきダムが歪んできているというソーシャルメディア上の指摘を受け、共産党傘下のメディアが反論している。
◆ダムが決壊? グーグル衛星写真が物議を醸す
ロイターによれば、三峡ダム崩壊疑惑は、あるツイッターのユーザーが投稿したグーグルマップの衛星写真から始まったという。投稿ではダムが曲がって、壊れそうに見えると指摘されており、この情報が中国国内のソーシャルメディアで拡散された。米国議会が出資する非営利ラジオ局、ラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、その後2007年から2018年のダムの写真を比べた画像が出回り、「深刻な歪み」があるなどと解説されていた。
国営電力会社、中国長江三峡集団は、三峡ダムは構造的に健全で、決壊の恐れはないと発表した。同社の専門家は、ダムは温度や水位の変化で数ミリだけ動いているが、安全性に問題はないとしている(ロイター)。共産党機関紙、人民日報の姉妹紙のグローバルタイムズ(7月7日付)は、中国の衛星が撮った高解像度の写真を掲載し、ダム自体に歪みはなく安全だと訴えた。また、ダムは1000年安心で、地球の重力は別とし、洪水や地震といった、外部からの力で変形することはないという専門家のコメントを掲載している。
◆住民は不安、納得できなくても何も言えず
多くのメディアが現時点で三峡ダム崩壊説を深刻に受け止めてはいない。三峡ダム建設に関わったある中国人エンジニアも、ダム崩壊は考えにくいとしながらも、問題は政府に対する国民の信頼の欠如だとRFAに話している。ソーシャルメディア上でも、「政府はよく嘘をつく」「一般人にはどうなっているのかわからない」といった意見もあるという。ダムの下流には7億人が生活しており、だれもが政府の言葉を信じているわけではないとRFAは述べる。
香港大学のジャーナリズム&メディア研究センターと提携するチャイナ・メディア・プロジェクト(CMP)は、三峡ダムは中国のナショナリズムにとって象徴的に重要であり、長年にわたって公の場での議論は厳しく検閲されてきたと述べる。そのため1980年代の建設開始以来、環境や人間への影響に関する議論は、どの時点でも不可能だったとしている(RFA)。
中国の地質学者で、長らく巨大ダムプロジェクトに反対してきたFan Xiao氏も、今回の噂は、三峡ダムプロジェクトについての議論の不足の反映だとし、今やダムは「国宝」であり、誰も批判できなくなってしまっていると述べている(ロイター)。
◆共産党メディア反発 ダムは国家のプライド
CMPは、ダムに関する懸念が、技術的安全性の問題より、国家のプライドの論点から語られてしまっていると指摘するが、グローバルタイムズの反応はまさにこれに当たる。
同紙は7月14日付の記事で、提携するWeChatの公式アカウント「Buyiao」の分析を紹介し、三峡ダムに対する噂や中傷は、工事開始以来続いていると断じる。水文学やエンジニアリングの知識もない理想主義者的な環境保護主義者から来ており、いまや反対することが目的になってしまっているとのことだ。加えて、三峡ダムは技術的問題というより政治的問題になってしまったとしている。
7月7日付の記事では、噂を広めているのは国内や海外の勢力で、自らの目的のために、意図的にプロジェクトと中国政府に泥を塗ろうとしているという、国内の専門家の意見を掲載している。国家の威信をかけたプロジェクトへの批判は、一切受け入れない姿勢が読み取れる。
同じ事を言いますが、この記事を見た人にはその様な観点から見ると、なぜ中国の動きに神経質になるのか判ると思います。
自国の安全性が脅かされる事は無いと言えれば好いんだが、少しでも危険を感じるのであれば世界に助けを求めても良いし、地球規模の危険を排除しない訳には行かない。
日本も世界には積極的に中国の隠れた覇権欲望を破壊しないと台湾も中国の自治区に為っていく。
阿保さと危険を大声で言いましょうよ。
今まで中國へ積極的応援?をしていた米国が知識を収奪(留学をさせて、スパイさながらに関与)、アメリカに出向したり学生が其のまま居残って研究する事に中国もその意図が見抜かれた事で注意喚起?
「俺っち」には、「父つぁん」から聞かされる事で日本人?の人よりも理解が早いと思う。
それにしても、中國は本当に世界のトラブルメーカーだ!
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